2016/8/10

それでも、気ままな旅はやめられない(1)

ムッシュー酒井の ど~もど~も No.40

今年の正月のアメリカ旅行は成田出発前からトラブル続き、チケットを購入したものの、アメリカの入国税が払われてなかったとチェックインできず1時間半ほどももたつき、挙げ句の果てにアメリカ到着と同時に風邪でダウン。10日間の半分はホテルで寝ていた始末。せっかくのアメリカでの旅の思い出も虚ろ。何とも締まらない新年の旅でした。

これがトラウマになったか、今月5月16日から6月1日の間フランスに出かけようとパソコンを開いてチケットの手配、ホテル、レンタカーの予約をしようとしたら、旅行会社からパスポートの有効期限残が2ヶ月切っているのでチケットを発行できないと言ってきた。あわててパスポートセンターに走り、どうにか出発予定日前日には発行できると聞いてホッと一安心。しかし、ついてない時に次々に起こるトラブル。レンタカーの予約終了と一安心したら、予約確認ページが急に消えてしまいアカウント番号も、予約番号も確認できなくなってしまった。すでにクレジットカードの番号は連絡済みで、支払いは成立している。アカウント番号がなければ車を借りることができない。IT機器、スマホなどがあまり得意でない私は途方に暮れてしまった。バウチャーをプリントアウトできなければ、キャンセル扱いになって料金全てを支払わなければならないのだ。真夜中の2時までパソコンにかじりついたが確認書が発見できない。あきらめて寝て、翌朝早く起きてパソコンにかじりついた。消去メールを整理し、迷惑メールも消去しようと思ったらレンタカーの確認書返信メールが迷惑メールに紛れ込んでいた。歳とるってイヤだね。なんでこんなことで3時間も4時間もパソコンに向き合わなくてはならないのかと思ったら、次の問題が30歳〜60歳の保険年齢制限。再びシルバーエイジ対象保険受付のレンタカーを探さなければならなかった。今までパスポートの有効期限なんてうるさく言わなかったし、レンタカーの保険年齢制限なんて聞いたことがない。世の中のんびりして居ると取り残されそう。とりあえずパスポートは有効期限10年を申請しましたが、周囲から80過ぎてもまだ旅行する気なのかとあきられました。

フランスは今でも同時テロによる非常事態宣言が発せられたままで、外務省の海外安全情報サイトをチェックしてみると「テロの標的になりやすい軍、警察関係の施設には近寄らないように、公共交通機関、観光施設、デパート、市場、そうした場所では、周囲の状況に注意し、不審な状況を察知したら速やかに現場を離れること」と記されている。これでは行くところがなくなってしまうし、不審な状況を察知することなどはまず難しいだろう。テロリストも不審感を察知されないよう突然現れるか、人混みにまみれてやって来るかするだろう。それなら人があまり来ない田舎や地方都市ならいいのではないかと思い今回は私の監訳書「フランス料理の源流を訪ねて」ではないが、地方、田舎回りをすることにした。それでも、とりあえず道具を買いたいし、情報も欲しい、少しはフランス語に慣れたいのでパリには寄りたいと思いホテルを探すことにした。情報では観光客が激減し閑古鳥が鳴いていると聞いていたが、さすが華の都パリ、ホテルは結構満室で料金もかなり値上がりしている。ネットで探すとセール価格でも3〜4万円するホテルばかりがヒット。時間をかけてオペラ座界隈のこじんまりしたホテルをようやく見つけ、2泊だけパリのホテルを確保。あとはWIFIの手当てのみだが。

現地での考えられるトラブルは車、積んである荷物の盗難が圧倒的に多い。知人がイタリア旅行にツアーで参加、バスがホテルに着き、ガイドから部屋割りの案内を受けている最中に、バスに積み込んであった荷物、それも団体客全員の荷物を盗まれてしまったという考えられない事件が起こったと聞いたのは昨年のこと。フランスに15年住んでいる知人、それも結構有名なシェフが地方都市で駐車中の車内から、荷物、パスポート一切を取られたとメールがきたのは半年前のこと。それに比べると、よく聞く、子供に囲まれ目の前に新聞紙をひらひらさせられ、気づいたら財布が抜かれていたなんていうのが可愛らしく思える事件。交通事故は自分で気をつければ防げるが、他人からの攻撃、盗難は防ぎにくい。フランス人に言わせるとほとんどの事件は、移民、流入外国人の仕業だというが、どうだろうか。

今回も行き先を定めない「ぶらり旅」の予定、かなりのんびりと好きなところを回れそうだが、目的を定めない旅は意外と気楽でも結構難しい。気ままに回って素晴らしい食事に出会ったり、全く未知の人と知り合いになったり、思ってもみなかった景色に出会ったり、あとで調べたら有名なところであったり、出会いが楽しい。しかし事前に調べておくわけではないので、知らずに通り過ぎてしまったり、ただの観光地かと無視したら、有名なカトリックの聖地であったり、チラっと見ただけのものが、世界遺産指定のものであったり、計画性のない旅には偶然が(Par hasard=パラザ、以前の私のレストランの名前で偶然の意)ついて回る。何やら今年の旅は出発前からトラブル続きなので、十分注意しなければと思っています。

酒井 一之
酒井 一之

さかい・かずゆき
法政大学在学中に「パレスホテル」入社。1966年渡欧。パリの「ホテル・ムーリス」などを経て、ヨーロッパ最大級の「ホテル・メリディアン・パリ」在勤中には、外国人として異例の副料理長にまで昇りつめ、フランスで勇名を馳せた。80年に帰国後は、渋谷のレストラン「ヴァンセーヌ」から99年には「ビストロ・パラザ」を開店。日本のフランス料理を牽引して大きく飛躍させた。著書多数。


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