2012/12/20

「豆料理」の無限大の可能性

現代日本を代表する料理界のトップが「豆料理」を語る

現代日本を代表する料理界のトップが「豆料理」を語る
現代日本を代表する料理界のトップが「豆料理」を語る

10月13日は豆の日

植物は次世代に生命をつなぐため、種子に様々な栄養を蓄えて発芽に備えている。この生命の源である種子を丸ごと食べることができる「豆」は、炭水化物、たんぱく質、ビタミン、ミネラルなどの栄養素をバランス良く含むうえ、食物繊維、抗酸化物質などの機能性成分にも富み、肥満、生活習慣病、高コレステロールなど現代人が抱える健康上の問題の解決にも役立つ質の高い食材である。また、味に癖がないことから、他の様々な食材との相性も良い。このため、世界では様々な豆料理が発達し、食卓に欠かせない栄養源となっている。

翻って日本の豆料理の状況を見てみると、和菓子や煮豆等として食べられる以外、料理の材料として用いられる機会は乏しく、レストラン業界でも豆料理が主役を張ることはほとんどない。

このような状況を踏まえ、10月13日の「豆の日」を控え、豆料理の未来を開拓するため、フランス、日本、イタリア、中国、製菓、家庭の各料理分野から、現代日本を代表する料理人であり理論家でもある六名の先生方にご登場いただき、それぞれが考案された様々な豆の使い方による豆料理12品を紹介していただくとともに、外食産業における豆料理普及の可能性やそのためのアイデアなどについて語っていただいた。

今回ご紹介いただいた豆料理は「豆ってこんなにバラエティに富んでおしゃれで美味しかったのか!」と感嘆するほど無限大の可能性を示唆するものであった。

日本料理

現状では、豆は健康に良いということが教育されていません。学校教育で健康とは何か、日本人は何を食べるべきかを教えないといけないと思います。家庭の主婦が手間暇を掛けることを嫌い、煮豆をしなくなりました。豆の種類は豊富ですが、大豆を加工した納豆、豆腐だけで満足しています。豆は必須アミノ酸が豊富で、米と食べるとお互いに補い合える日本人向けの食材なのです。
野﨑洋光氏(分とく山 総料理長)

野﨑洋光氏
野﨑洋光氏
豆おこわ
豆おこわ

豆おこわ(使用豆:大納言、虎豆)
フードプロセッサーで細かくした薄揚げを隠し味にしてコクを出しました。古くからある料理もこのように現代の機器を使うことでよりおいしく作れます。冷めてもおいしいですし、もち米なので冷凍がききます。

家庭料理

豆は高タンパク質で食物繊維が豊富、低脂肪なので、筋肉をつけるには最適ですし、ダイエットをする若者にピッタリです。お母さんたちは付け合わせに困っています。味の付いていない水煮だけでなく、ソースにマリネされている豆があれば使いやすいのではないでしょうか。また『野菜豆』のようなおしゃれなネーミングで売り出しても良いのではないでしょうか。家庭で食べる機会が増えれば子供たちは学校給食でも残さず食べるようになるはずです。
江上栄子氏(江上料理学院院長)

江上栄子
江上栄子
インゲン豆とマッシュルームのイタリアンマリネ
インゲン豆とマッシュルームのイタリアンマリネ

インゲン豆とマッシュルームのイタリアンマリネ
すぐに使えるように豆をゆでて冷凍しておき、季節の野菜と和えます。ボリュームが出ることが特に若い方にとって魅力だと思います。豆は味がホワンとしていますので、生ハムやベーコンなどの脂肪分と組み合わせると味が引き立ちます。

フランス料理

豆は古代から使われています。フレッシュな豆だけでなく、乾燥豆は保存食として人類の食生活に貢献をしてきた食材の1つ。現代的な感覚の豆料理が望まれている今、貴重な食の資源である豆をどう調理していくかは料理人の課題です。また、将来を見据えて学校給食などでおいしい豆料理を食べさせれば、豆好きな子供たちが増えると思います。
中村勝宏氏(JRホテルズ取締役顧問、ホテルメトロポリタンエドモント名誉総料理長、公益社団法人全日本司厨士協会副会長)

中村勝宏氏
中村勝宏氏
白インゲン豆入りピストゥースープ帆立貝とエビのクネル添え
白インゲン豆入りピストゥースープ帆立貝とエビのクネル添え

白インゲン豆入りピストゥースープ帆立貝とエビのクネル添え
バジリコ、オリーブオイル、豆、パスタを入れる南仏のピストゥースープに、クネルを入れてアレンジしました。豆をピューレにして更に豆の風味を出しても良いでしょう。

イタリア料理

イタリアでは豆はいわゆる漢方薬的な存在で、食材屋ではなく、そういった専門店で買います。健康に良いということが定着しています。とにかく季節に合わせて豆をよく使います。食感がモソモソしていると食べにくいので、半分を裏ごししてパスタと和えるとお客さまに喜ばれます。豆は、特性に合わせてサラダ、スープ、煮込み、菓子に活用できる可能性のある食材です。
片岡護氏(リストランテアルポルト オーナーシェフ)

片岡護氏
片岡護氏
うずら豆スープのマルタリアーティ
うずら豆スープのマルタリアーティ

うずら豆スープのマルタリアーティ
生パスタのマルタリアーティ入りで100%うずら豆の食べ応えのあるスープ。赤ワインにもよく合います。イタリアだとパスタと豆を一緒に料理することが多いです。ローマではガルバンゾーをスープで煮て、生温かい感じで食べたりもします。

中国料理

医食同源の料理が多い中国料理の中で、豆は名脇役。小豆をスープにしたり、ピーナッツと粥にしたり。また中国料理では、緑豆からできる春雨のように『加工』を加えた豆製品はたくさんあるので、さらに日本的な『加工法』を研究すると、料理にも非常に使いやすく魚にも肉にもよく合うおいしい料理ができると思います。
譚彦彬氏(赤坂離宮グループ オーナーシェフ)

譚彦彬氏
譚彦彬氏
香甜八寶粥(ヒョウテンパポウチョ)
香甜八寶粥(ヒョウテンパポウチョ)

香甜八寶粥(ヒョウテンパポウチョ)
小豆、緑豆、眉豆(ブラックアイビーンズ)、黒豆、金時豆、三角豆(ひよこ豆)、花生(ピーナッツ)、蓮子(はすのみ)の8種類の豆を使用し、氷砂糖で味付けした甘い粥。お祝いの席では、白玉を入れます。陳皮、蓮子がアクセントです。

製菓

和菓子には豆が多く使われますが、フランス菓子には豆を甘く煮るという発想がありません。例えば豆を粉状にしたり、ペースト状にしたものがあれば、菓子に使ったり、アイスクリームと合わせられますので、可能性は無限大でしょうね。このビジネスやる人いたら当たりますよ。
石田日出男氏(ホテルメトロポリタンエドモント総料理長)

石田日出男氏
石田日出男氏
うずら豆スープのココナッツミルクとレンズ豆のお汁粉風
うずら豆スープのココナッツミルクとレンズ豆のお汁粉風

うずら豆スープのココナッツミルクとレンズ豆のお汁粉風 抹茶のアイスクリーム添え
ココナッツミルクは独特な甘みがあるので、抹茶のほろ苦さでバランスを取りました。日本料理でも中国料理のデザートにも良いでしょう。タピオカを入れると更に食感にアクセントが生まれます。アヴァンデセールにも向いています。


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