2013/1/10

赤の秋色サラダ

ギリシャ食のリポート

今回は、ギリシャの「秋色サラダ」を、クレタ島ハニアで人気のレストランからご紹介したいと思います。

こちらクレタ島では「純ギリシャ料理」のレストランがほとんどで、魚が得意、肉が得意、などの分野はあっても、メニューはどのお店もほとんど同じだったりします。

しかし、最近ここハニアでホットなレストランは、伝統料理にフュージョンというひねりを加えているお店です。ヨーロッパの南東部、エーゲ海と地中海に浮かぶクレタ島は、その東にトルコ、南にはアフリカ大陸を臨みます。これら地中海周辺国の料理とギリシャ料理をフュージョンした「地中海料理」が今人気です。アルジェリア、モロッコ、トルコ、シリア、イタリアなど、お店によってフュージョンする料理も様々です。

1品目は海辺の隠れ家的人気レストランから、大好きな「ルッコラのサラダ」を。このお店はギリシャとアルジェリア等、アラブ料理のフュージョンです。たっぷりのルッコラに、ナッツやチーズ、そして甘酸っぱくてジューシーな、秋色ザクロがキラリ。サラダに入れるとザクロの種が気にならないのは不思議です。水中でザクロの皮をむくと、飛び散らずに綺麗に可食部を取り出せます。水気を切って、そのままスプーンで食べていたのですが、サラダに入れるのは簡単で見た目も美しいですね。

2品目は、新しく再生した裏通りにある人気レストランから。この裏通りは、歴史的にムスリムやユダヤ人が住んでいた場所で、すぐ近くにはギリシャ正教の教会もあります。まさに文化や歴史が融合したストリート。かつて寂れていた場所なのですが、新しくお店を開いた人たちがカルチャーを発信しています。

この裏通りの中でも人気なのが、メソギアコ(地中海の)という名前のお店。こちらで選んだ秋色サラダは「ビーツのサラダ」。マゼンタ色が鮮やかで、見ても食べても美味しい。甘味のあるビーツにはクルミがよく似合います。そこにニンニクとディル、サントリーニ産の大粒ケイパーで味が引き締まり、クリーミーなグリークヨーグルトのマイルドな酸味もマッチします。両隣のテーブルを見ると、それぞれ同じくビーツのサラダがありました。ヒポクラテスがビーツの葉っぱを傷口の治療に使っていたように、ギリシャ人とビーツは紀元前からのお付き合いなのです。

ビーツのサラダ
ビーツのサラダ
メソギアコのある通り
メソギアコのある通り

また、ビーツが偉いのは、葉っぱも美味しいところ。ホウレン草の仲間だけあって、葉をさっと茹でるとまさにそのような味。鉄分などの栄養価が高いだけでなく、葉は深緑で茎はマゼンタ。色のコントラストも綺麗。ビーツは、こちらに来て初めて市場で発見し、わくわくしながら茹でた野菜。日本ではなかなか調理する機会がなかった野菜です。茹で汁も綺麗なマゼンタ色。いつも「あぁ、綺麗な色! 何かに使えそう」と思いながら、名残惜しくも捨てていました。

さて、この茹で汁は何に使えるでしょうか。
シェフのみなさんならどうされますか?

私のなけなしのセンスでは、マッシュポテトに色づけして、紅白マッシュ?! うーん。ロマンティックな秋色ビーツで、面白い一品をこしらえるのが秋の課題であります。

青木 瑠衣子(あおき るいこ)
メーカーの海外営業でタイ・ベトナム・中国の担当を経て、出張のない商社の派遣勤務に転身。同時にベリーダンス講師としてレストランショーとお教室を展開。縁あって、現在ギリシャ・クレタ島在住。趣味は踊りと読書。


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