2016/3/18

福岡 日本料理の源流(郷土料理)を訪ねて(1)

世界のセレブリティシェフが割拠し、黄金のフラッシュライトを浴びる料理の数々も、その源を辿れば、自らの育った故郷の料理やママの味にたどり着くと言われる。家庭料理や郷土料理から生まれた料理は、最先端で様々な技法や文化と融合しながら、常に進化し続けている。
料理の世界的なクロスカルチャー、グローバル化、ボーダレス化が進み、めまぐるしい変化を強いられるレストラン料理にとって、何世代にもわたって変わらない味が愛され続けている「郷土料理」の深淵に触れることは、自らの料理アイデンティティの確認作業でもあり味覚の本質に迫る作業でもある。そこはまた成功をつかむアイデアの宝庫でもある。

福岡中洲の屋台群
福岡中洲の屋台群

 
福岡中洲の川端に並ぶ屋台群は博多名所になっている。ここでは、ラーメンのみならず、おでん、寿司、焼鳥、餃子、てんぷらなどバラエティに富んだ料理をお酒とともに夜遅くまで楽しむことができる。

水炊き MIZUTAKI

明治29年に15歳で香港に渡り英国人の家庭に住み込んで料理を学んだとされる林田平三郎が、そこで習得した西洋料理のコンソメと中国風鶏のスープをアレンジして作り上げたものが現在の水炊きの原型になっているという。また、牛鍋などとともに鍋を囲んで大人数でつついて食べる日本の国民的な食スタイルを築いた。骨つきのままぶつ切りした鶏と水と野菜だけの究極のシンプル料理だからこそ、素材やスープの取り方にも深いこだわりや工夫がみられる。その後、明治43年に博多で開業した料亭新三浦が、東京、大阪、京都などに店を出し「博多水炊き」としてその名を各地に広め、福岡の代表的な料理として今に至っている。ミシュラン福岡・佐賀版にも幾つかの水炊き名店がその名を連ねている。

ごま鯖 GOMA-SABA

鯖(サバ)の刺身を、すりごま、醤油、酒、みりん、すりおろし生姜などを混ぜたものに漬け、半日ほど冷蔵庫で味を染み込ませる。それを熱いご飯の上に載せて、もみ海苔、ワサビ、大葉などを添えて食べる場合と、湯や出汁などをかけ茶漬け風にして食べる場合とがある。甘辛いタレとごまの香ばしさが特徴で、新鮮な鯖が手に入る福岡ならではの郷土料理である。


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