2019/3/8

東京會舘

東京會舘
東京會舘

2019年1月8日グランドオープン。新しくなった東京會舘にどうしても伺いたくて2度めの取材をオファーした。
『NEWCLASSICS.』(ニュークラシックス)。“新しくて伝統的”をコンセプトに、8つのレストラン、ショップは伝統の味を受け継ぎつつ次のステージへ。丸の内最大級のバンケットホールも備え、3代、4代にわたる顧客を大切にしながら、新しい客層も迎える。この場所が好きだという、シェフやスタッフの方々の思いは変わらない。

調理・製菓部 部長 総調理長斉藤哲二
調理・製菓部 部長 総調理長
斉藤哲二

調理・製菓部 部長 総調理長 斉藤哲二
埼玉県出身。1978年株式会社 東京會舘入社。接客業務を学んだ後、1980年調理部へ。宴会部門とレストラン部門(プルニエ)に従事。2002年経団連ゲストハウス調理長へ就任。オランダのマグリッド女王や小泉元首相をはじめとするVIPをお迎えする。2007年フランス料理研修・視察を経験。その後、レストラン プルニエ調理長、浜松町東京會舘調理長を経て、2018年調理・製菓部 部長 総調理長に就任。

ブレないスタイル

数年前、一度めの取材では、当時の外山総調理長に話を聞いた。そのときと同様「宴会、レストランで商いをしていますので、手作りするというこだわりは変わりません。」と斉藤哲二総調理長は話す。手作りにこだわるというスタイルは、コストの面で挑戦でもある。「どこまでできるか分かりませんが、とにかくいまは続けていきたい」と続ける。

代表的なのがさまざまなソース。宴会でお出しするローストビーフについて「ジュは、10日間ほどかけて仕込みます。レシピは人づてに大切に伝わってきたものです」。つなぎを一切使わず、チキンとビーフの出汁のみで仕上げるジュは、コクがあるが驚くほどサラッとしている。また、コンベクションオーブンが台頭するなか、ガスオーブンの直火にもこだわる。「肉や魚の仕上げには欠かせません」。

婚礼メニュー 旬の食材をいかした華やかなフレンチ〝SEASONAL STYLE”
婚礼メニュー 旬の食材をいかした華やかなフレンチ
〝SEASONAL STYLE”
ローストビーフ
ローストビーフ
舌平目の洋酒蒸 ボンファム
舌平目の洋酒蒸 ボンファム

新生 東京會舘は『NEWCLASSICS.』(ニュークラシックス)をコンセプトに掲げ、例えば婚礼料理だと新しい盛り付けの料理と、伝統的な料理の2パターンがある。「不思議なことに、伝統料理を選ばれる方が最近は多い。やはり東京會舘の王道的な料理が人気なのか、逆に新鮮なのかもしれませんね」。一方、レストラン プルニエのスペシャリテ『舌平目の洋酒蒸 ボンファム』は新しく松本浩之シェフを迎え、伝統を尊重しつつもソースの最後の一滴まで楽しめるよう軽やかに生まれ変わった。

グリルレストラン ローストビーフ&グリル ロッシニ
グリルレストラン ローストビーフ&グリル ロッシニ
チャペル
チャペル

人に、素材に、味に敏感であれ

入社してすぐは、バーテンダーに従事したという斉藤総調理長。「東京會舘では料理人だけではなく総務や人事のスタッフも、ほとんどが最初にサービス業を経験します」。信頼のおもてなしは、この方向性から生まれている。その後に配属された宴会部門には、ソシエに8年、ポワソンに7年、等随分長く勤務した。「当時はなぜこんなに長いのかと思ったこともありましたが、この歳になって、その意味が理解できるようになりました」。

若い世代の育成に関しては、「わたしたちの時代は教え方が一律だった。同じことをずっと続けることも多かった。とにかく鍋洗いを一週間、ひたすら運ぶだけを一週間という具合に。いまは個々に育て方を変えていくべきだと考えています」。また、本舘だけではなく営業所も知ることが大事だと考える。「東京會舘であれば、どこで食べても同じ味でなくてはならない」と、味の統一にも心を配る。

60歳の斉藤総調理長だが、幸いに、長く勤めている50代の優秀なスタッフが揃っていることが、人材育成の際に大きな助けになっているという。時間、手間をかけて作るのが東京會舘の流儀。これに誇りを持っているので社員は長く勤めている。「仕事は結局、人とのつながりです。信頼関係がないと良い職場にはならない」。特筆したいのは、スタッフも東京會舘を愛しているという点。「みんな忙しくても明るいですよ」と斉藤総調理長は笑う。

フランス料理 レストラン プルニエ
フランス料理 レストラン プルニエ
宴会場 ローズ
宴会場 ローズ
日本料理 八千代
日本料理 八千代
鉄板焼 TOKYOKAIKAN會
鉄板焼 TOKYOKAIKAN會

これからの若いシェフたちには、「食材の産地にも興味を持ってそこへ旅行に行ったり、美術館に行ったりして欲しい。そして野菜を作ってみたり、魚を釣ってみたり、触れながら、遊びながら勉強をして欲しい」とメッセージを送る。そして、衛生面やアレルギー対応といった食の安全に関しても、若いうちから知っておくべきだと強調する。人に、素材に、味に敏感であり続けたことが、これまで東京會舘を支えてきたのだ。


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