2019/10/10

パレスホテル東京

PALACE HOTEL TOKYO

TOKYO HOTELS & RESTAURANTS
INTO THE FUTURE

パレスホテル東京の前身は、1947年開業の国有国営ホテル「ホテルテート」にさかのぼる。1961年、当時としては初となるオフィスビルを併設した「パレスホテル」へと生まれ変わり、最新設備を備えた近代的ホテルとして注目を集めた。2009年、新たな時代にふさわしいホテルに全面建て替えするため休館。2012年、「パレスホテル東京」としてスタートを切った。
ホテルに入って感じるのは、香り。50年以上培われてきた品格を継承しながら、どこか海外のホテルにいるような洗練を感じさせる。新たにラグジュアリーホテルが都内にオープンする中、パレスホテル東京は常に第一線を走り続ける。パレスホテル東京はなぜ、先駆者となり得たのか。その理由を齋藤正敏総料理長に聞く。

取締役 総料理長 齋藤 正敏 Masatoshi Saito
2010年株式会社パレスホテル入社、2013年4月総料理長に就任。「Japan Prize 2015 日本国際賞晩餐会」の宴席をはじめ、東北復興支援イベント「モナコ宮殿 ×エリゼ宮殿ふたりのグラン・シェフの饗宴」など星付きシェフを招聘したガラディナーを数多く統括。また外務省飯倉公館では、外務大臣および外務次官主催の宴席を150回以上担当し、中でも05年の小泉総理(当時)主催によるフランス大統領ジャック・シラク氏 (当時) 歓迎レセプションは輝かしい。
2016年フランス「農事功労賞」のシュヴァリエを授章。

取締役 総料理長 齋藤 正敏
取締役 総料理長 齋藤 正敏

ホテルはニーズに沿って変化すべきである

「過去とまったく同じことをしない。考え方、技術にはもちろん伝統を重んじていますが、料理はお客さまに共感していただけるよう変化させています」と齋藤正敏総料理長は話す。料理だけではない。新築でなければできなかったことのひとつに厨房改革がある。厨房からバンケットルームまでの距離が遠いホテルにおいては、「オペレーション全体を考慮しながら、バックスペースを構築していく」ことが重要だった。ガスと電気の両立も大きな課題だったが、「得意技が対極なので、キッチン設備や機材にはどちらも効率的に取り上げていく」ことを考えた。新たに生まれ変わったからこそ挑戦をし続けて、今のかたちがある。

鉄板焼 「濠」
鉄板焼 「濠」

大きな例としてオールデイダイニング「グランド キッチン」を挙げたい。「フランスのビストロ、イタリアのトラットリア、スペインのバルのいいとこどりをした」1階のレストランは、ホテルではありがちな宿泊や宴会のついでに寄るのではなく、ここを目的に来てもらう場所を目指した。連泊でも飽きない朝食のラインナップ、昼と夜はあえてブッフェにはせずアラカルトやコースを設定。「テーブルにボトルワインがのっていて、料理をシェアして食べるようなワインバー的な感覚で使って欲しい」と齋藤総料理長が言うように、お濠の緑をのぞむテラスからひろびろと続く開放的な空間は、時間にかかわらず心地よいざわめきに満ちている。テーブルのデコレーション、インテリアの作り込みは、外資系ホテルや海外のラグジュアリーホテルを参考にした。そうして緻密に作り上げられていったダイニングの洗練度は群を抜いている。

オールデイダイニング 「グランド キッチン」 サマーテラスプラン
※2019年の開催は終了しました

オールデイダイニング 「グランド キッチン」 サマーテラスプラン
オールデイダイニング 「グランド キッチン」 サマーテラスプラン

ホテルの料理に対する危機感も大きく関係しているようだ。「40年前はホテルが発信の中心だった。今は街のレストランが発信の中心です。規模の大きさもあって難しい部分もありますが、コンセプトを持った料理からホテルは遅れてしまっている。少しでも追いつくように、それぞれのホテルがカラーを打ち出していく必要がある。ホテル同士での切磋琢磨も必要です」。
世界的なトラベルガイド「フォーブス・トラベルガイド」のアワードでは日系ホテルで唯一の5つ星を獲得。客室も高く評価されているため「ホテルを良く知っている方、スマートに利用されている方、世界を飛び回っている方も多い。細かなリクエストもありますが、ある程度の型を用意しながら、こまやかに対応していきたいと思っています」。

料理人はアーティストでプロデューサーである

スタッフへの向き合い方を尋ねると「くん、さんづけで呼ぶことにしています」と答える。総料理長という肩書きに威厳があるあまりに近寄れないものにならないよう、風通しが良くなるようフレンドリーさを心がける。一方で「ミスははっきりと指摘します」。また「お客さまの口に入るものをつくるのだから、細心の注意と誠心誠意を忘れてはならない」と続ける。

「お料理のプレートには作り手の気持ちが大きく反映されます」。お客さまの中にはプロの料理人以上に知識豊富な人もいる。失望させないようにしっかりとした料理を提供しなければならない。そのために「味見は必ずするように伝えています」。経験が長くなると、目だけの情報で大丈夫だと思ってしまう。「そんなに甘い世界ではない。材料の鮮度、品質も含め、決められた枠から外れていないかを常にチェックしなければなりません」。

日本料理 「和田倉」
日本料理 「和田倉」
天麩羅 「巽」
天麩羅 「巽」

7月には1964年創業のフランス料理「クラウン」を閉店。新しいフランス料理「エステール」をオープンする。日本のホテルでは初めてとなるアラン・デュカス氏をパートナーに迎えたレストランだ。「多くの方々にご愛顧いただいてきたので、名前を継承するかどうかさまざまな意見がありました」。ホテルの中にあるフレンチとしては日本最長と言われた「クラウン」だが、これからの50年を見据えて改名に踏み切った。「池に石を落とすと水紋が広がっていくように、業界に話題を発信していく立場でいたい」。年間約900件を受け入れるウエディングでも、飽きられない仕掛け、違う表現を模索し続ける。
これまで多くの海外シェフとコラボレーションする中で何度も渡仏し、フランス中を巡った。「その時に食べた料理が、今も自分の中に残っています。数多く食べることはとても大切なことです。

時間もエネルギーも限りがある中でどれだけやれるかがその後を大きく左右すると思います」。いまでもキッチンに入るとワクワクする。「もっと何かできないか?と思いながら仕事をしています」。
料理は芸術、料理人はアーティストであると断言する。「人に感動を与え続けられる職業です」。加えて、組織の中ではプロデューサーでなければならない。時には人と折衝をし、まとめていく力も求められる。さまざまなことに興味を持ち、吸収し、新しさへ貪欲に挑み続ける。

パレスホテル東京
東京都千代田区丸の内1-1-1
TEL 03-3211-5211
URL:https://www.palacehoteltokyo.com


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