2020/5/20

世界のお米をめぐる気候と調理

お米の話 連載17

(株)龍の瞳 代表取締役 今井 隆

世界のお米をめぐる気候と調理
世界のお米をめぐる気候と調理

お米は、人との関わりでいえば、たかだか数千年の歴史しかありません。現生人類の出現を仮に10万年前とすると、狩猟と採集の時代がはるかに長く続いていました。
農耕と牧畜が始まって、人は富を蓄えるようになり、やがて階級という仕組みが生まれ貧富の差が広がりました。言うまでもなく、アジアでは農耕の中心は稲作です。
一口でお米と言いましてもさまざまな品種特性があり、その地帯の気候や風習などに対応して、食べ方が定まってきたことに必然性があると思います。

日本人は、稲作の初期のころから長らく玄米を食べ、のちに白米に移行しました。私たちの食べるジャポニカ米は、粘りがあり、喉の通りが良いことから、通常であれば人には好まれます。長粒種であるインディカ米を常食としているインドネシア人が来日し、日本のジャポニカ米の美味しさを知ると、もうインディカ米が食べられなくなってしまったという話を聞いたことがあります。インドネシアにもジャポニカ米があり、インディカ米の中にも粘りのあるものがあるのですが、日本のお米がいかに美味しかったかという一例だと思います。

インドネシア人は、日本人と同じように白米で食べることも多いようです。インディカ米は、基本的にバサバサしており、ジャポニカ米よりは腐敗することは少ないのではないかと推測されます。高温・多湿地帯なので、炒めたり味付けをしたりすることで腐敗を防ごうとする行為は納得できます。また、香辛料が豊富で、味付けの仕方もいろいろあるようなので、「ご飯+おかず」を基本にする和食よりも、これらは合理的な調理方法かと思われます。

ヨーロッパの気候は、田植え時期に降水量が少なく気温も低いため、稲作には適しません。むしろ小麦の栽培が理に適っていたことから小麦文化が大勢となりました。しかし、スペインやイタリアの一部地域では稲作が行われ、パエリアやリゾットの料理文化が花開いています。

2016年11月に、東京お台場にある「グランドニッコーホテル」さんで「シェフの集い」が開催され、龍の瞳(R)でパエリアを作っていただきました。クエという魚が使われ、しっかりとした味が口の中に広がって感激しました。

グランドニッコーホテルのパエリア
グランドニッコーホテルのパエリア

ところで炊飯器でお米を炊き始めて、ちょうど「蒸しモード」に移ったばかりの段階が、パエリアと同じように芯が残った状態なのです。その後、余熱によって芯まで柔らかくなります。「蒸しモード」に入った直後に、たまたまご飯を混ぜ合わせて食べてみて、そのことに気づきました。仕組みは同じなのだと、妙に納得しました。

イタリア料理のリゾットも芯が残るように調理するとのこと。龍の瞳(R)をリゾットに使っているレストランは、ちょくちょくあります。イタリアから日本にリゾット用に輸入されているイタリア米の「カルナローリ」は、価格が1キロ当たり1500円程度なので、むしろ龍の瞳(R)のほうがはるかにお値打ちです。

岐阜県高山市のイタリア料理店でも龍の瞳(R)を使っていただいています。「龍の瞳を使ったカボチャのリゾットは甘くて美味しかった」という、食べログの書き込みを見たことがあり、嬉しかったです。

いずれにしましても、ご飯を料理の主役においてきた国は、世界でも日本ぐらいでしょう。お粥も同様で、米本来の味を生かそうと、さっぱり味に仕上げているのだと思われます。
「ご飯が不味ければ、料理が台なし」という言葉は、今でもよく聞きます。また「ご飯」という言葉が「食事」そのものを表すのも、日本ぐらいではないでしょうか。
聞くところによると、炊飯器の水加減も日本ほど正確に測る民族はいないようです。多機能炊飯器が正確さを求めている側面もあるのでしょうが、お米に対する強い思い入れがそこにあるように、私には感じられます。

今井隆さん(代表取締役)
今井隆さん(代表取締役)

株式会社 龍の瞳
岐阜県下呂市萩原町大ヶ洞1068
TEL:0576-54-1801 FAX:0576-54-1836
http://www.ryunohitomi.co.jp


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